ブログカテゴリー: ラボより

皆さんこんにちは。
いよいよ夏本番に入ってきましたが、体調など崩されていませんか?
暑くて冷たいものが欲しくなりますが、あまり身体を冷やさないようにしてくださいね。

さて、現在当院では
月に2回、土曜日の13:30~「小規模セミナー」
という少人数制のセミナーを無料開催中です。

現在お話している内容は、体外受精治療を始める前に知っておきたい基本的な部分!
ですから…

Drに体外受精を勧められたけど、ステップアップするか迷っている…
どんな治療なのか、どんな技術なのか、専門家から話を聞きたい…
色々と質問したいことがあるけど、診察時間ではゆっくり聞けなくて…
保険適用になったけど、どれくらい費用がかかるのか知りたい…

という、お悩み中の皆さんに向けて胚培養士が40分ほどお話をさせて頂き、その後に質問を受けながら、皆さんのもやもやを解消していきます。
セミナーの時間は大体1時間ほど。

来院して話を聞くのは少し手間に感じるかもしれません。
しかし、保険適用になったとはいえ決して安い治療とはいえません。
治療に不安があるのであれば、思い切って直接質問してしまったほうがスッキリしますよ!
また、普段は一緒に診察に来ることができない
旦那さんにも、治療のことを知ってもらういいチャンスです。

参加者が1名または1組であっても、実施いたします。
また、セミナーは当院に通っていない患者さんも聞くことができますので、他院治療中の方でもお気軽にお越しください。

セミナースケジュールはここをクリック!

セミナー担当: 胚培養士/体外受精コーディネーター 岸田

皆さんこんにちは、培養士 Kです。
この度、5/18,19に神戸で開催された第65回 日本卵子学会へ参加してきました。
コロナもありWeb開催が多かったため、久しぶりの現地参加となりました。

臨床で気づいたことや新しい試みをたくさん聞くことができて刺激となりました。
今後、当院の治療に活かせるように頑張りたいと思います。

今回は、私も『胚盤胞のグレーディング』に関して発表をしてきましたので、ちょこっとご紹介します

胚盤胞の評価はGardner分類という方法がほとんどのクリニックで使用されています。
Webでも目にする “4AA” とか “3BB” などのグレードのことです。

妊娠では2番目のアルファベットであるTE (栄養外胚葉)の評価が重要となります。
複数の受精卵がある時は妊娠率の高い方から移植したいので、特にTEの評価は重要となります。

しかしGardner分類は細胞数が多い=A、少め=Bという感じで明確な基準がありません。
当院含め各施設、十分なトレーニングを経て評価の統一を図ってはいますが、どうしても評価者の間で差が心配です。
そのため評価するときに胚盤胞のTE細胞数を数えることでより良い評価にならないかを検討してみました。
結果として、細胞数を数えることで評価者の差を少なくすることが期待でき、より妊娠率の高い胚をセレクションできる可能性が考えられました。

既に当院の胚盤胞評価には、この方法を導入しており、厳密に胚盤胞のグレードを評価できるように努めています。

今後も治療の中から気づいたことを検討し、成績アップや統一した医療を提供できるように努めてまいります。

皆さんこんにちは。胚培養士のRです。

まもなく5月も終わり、じめじめした梅雨の時期になりますね。

外出するのも億劫になるこの季節……ご夫婦で少し体外受精の勉強会をしてみるのはどうでしょうか(笑)?

 

「勉強会」という大げさに聞こえてしまいますが、皆さんは、当院の胚培養士が作成している説明動画をご存じでしょうか?

現在、デジタル診察券へと変更になり、予約システムのアプリを利用している方は多いと思います。

アプリには動画視聴ができるコンテンツ「Wovie」が入っています。

自己注射の実施方法動画の視聴などでも利用されていると思いますが、そこに、「胚培養士説明」というカテゴリがあります。

当院では全国的にも決して多くはない、胚培養士が説明を行っている施設です。

採卵後から実際に患者さんと対面式でお話をさせて頂いていますが、内容が専門的なため、なかなか一度では理解することが難しいと思います。

そこで、帰宅後にもご夫婦と一緒に復習ができるように、治療方針の相談ができるようにと、対面の説明でお話している内容にプラスアルファもう少し情報をくっつけて、説明動画を準備しています。

 

今回、5/12(日)に東京で開催されました、日本不妊カウンセリング学会にて、この動画視聴状況に関して発表をしてきました。

体外受精に進まれる患者さんには、前周期に「体外受精のしおり」という案内資料をお配りしています。

こちらの資料にも動画についての案内を掲載しており、皆さん、初回の採卵前にご覧になっていらっしゃいました。

やはり、初回が一番緊張しますから情報もたくさん欲しいですよね。

お役に立っているようで培養士一同うれしく思っています!

ただ、残念ながら、繰り返しご覧になっている方、採卵後に視聴をしている方は少なめでした。

採卵後は私たち培養士と直接話す機会がありますので、そちらで質問できると思っている方も多いのかなぁ~と思っています。

採卵前に見て欲しい動画と採卵後に見て欲しい動画があります。

また、どうしても難しい内容もあると思いますので、繰り返し確認をしてもらえると嬉しいです。

 

というわけで。

冒頭に戻ります。

 

外出するのも億劫になるこの季節……ご夫婦で少し体外受精の勉強会をしてみるのはどうでしょうか(o^―^o)

 

テーマ:

卵子凍結について

こんにちは!培養士のAです!
暖かくなってきて、お花見が待ち遠しいですね🌸!

今回は、卵子凍結についてお話したいのでブログを書いています✍
最近では芸能人の方も公表していて、興味がある方も多いのではないでしょうか?

卵子凍結には2種類あります。

 医学的卵子凍結

放射線治療等で妊娠する力を失う可能性がある場合に、治療前に卵子を保存します。

 社会的卵子凍結

健康な人が、将来に備えて若いうちに卵子を保存します。

当院ではどちらも行っています。

今回は社会的卵子凍結についてお話していきます!

当院は夫婦で行う不妊治療のイメージが大きいと思いますが、
まだパートナーがいない方、子供はまだ先かな、と考えている方も
将来の妊娠のために、今できることがあります。

 なぜ卵子を凍結するの?

卵子は増えずに減り続けます。
つまり今が一番卵子の数が多い状態です。
さらに、新しく作られないということは、老化していくということです。
将来の卵子の状態はわかりません。
今!若いときのより良い卵子を保険として凍結します。

 

 凍結した卵子の個数=もてる子供の数ですか?

卵子凍結をすれば、100%子供を持てるというわけではありません。
卵子にとっては凍結、融解はダメージになります。
融かしたときに、壊れてしまう可能性もあるのです。
その後も、受精するか?うまく育つのか?たくさんハードルがあります。

 卵子凍結をすればいつでも妊娠できるということ?

卵子の老化について話しましたが、もちろん体も老化します。
卵子を凍結したからといって、いつでも妊娠できるようになったわけではありません。
妊娠を考えている方は、現在の年齢、出産子育てにかかる時間等を踏まえてライフプランを考える必要があります。
悩んでいる方は、まずは検査から始めることもできます。
AMHという値を測ると、残りの卵子がだいたいどれくらいかがわかります。
まずは自分の体を知って、これからのライフプランを考えてみるのはいかがでしょうか?
検査のみを行いたい方向けに、
当院ではプレコンセプション検査として3コースご用意しています!

くわしくはこちら

1月6日・7日に東京で開催されたエンブリオロジスト学会に参加してきました。

1日目は培養士向けのワークショップとなっており、
全国から培養士が集まって情報交換や技術の習得に努めます。
私はTESE(精巣内精子採取手術)のワークショップに参加してきました。

TESEは精巣に切り込みを入れて精細管の一部を採取する手術です。

手術は医師が行っており
① 採取された組織を『細切』(専用のはさみで細かく切り刻む)
『鏡検』(顕微鏡で動いている精子を探す)
『凍結』(精子が見つかったら組織ごと凍結)
の3つの工程を私達培養士が担っています。

ワークショップではネズミの精巣を用いて、細切・鏡検の流れをスムーズに行う方法を実践しながら学びました。
精子の有無を迅速に判定することが手術時間の短縮になり、患者さんの負担を減らすことにつながるため、当院の方法にも組み込んでいきたいと思います。
ちなみに…
TESE手術の当日には患者さんのお名前確認に、その日TESEを担当する培養士がご挨拶に伺いますので、よろしくお願いいたします。

2日目は学術大会です。
今回は講演がメインとなっており、ヒトに関する研究だけでなく動物で研究中のテーマもあってとても勉強になりました。
今回は「患者の本音」として東尾理子さんの講演があり、取り組んでいる妊活研究会でのお話しを聞くこともできました。

私達培養士は、技術の向上はもちろんですが、患者さん個人に合った治療を一緒に考えていけるように、たくさんの声を聴いて向き合っていきたいと思います。
当院では培養中の受精卵の状態などの説明に培養士が携わっているので、分からないことや不安なことがあれば気軽にご相談ください。

今回の学会で、私はポスター形式で「胚盤胞の直径が妊娠率にどのくらい影響するのか」という発表を行ってきました。
受精卵(胚盤胞)の凍結時には4AAや4BBなどのグレードを基準としていますが、胚盤胞の大きさも一つの指標になっています。
当院での過去のデータを調べたところ、同じ良好胚盤胞であっても

直径の大きな胚盤胞の方が妊娠率が高い

ということが分かりました。

また、40歳以上ではその差が大きくなっており、グレードの良い大きな胚盤胞を凍結することが重要になります。
このポスターは当院2階に掲示されているので、よかったらご覧になってください!

培養士 杉田

今回、水戸で開催された「がん・生殖医療学会」に参加してきました。

近年、1年間でおよそ100万人の方が新たに”がん”と診断されており、
そのうちAYA世代と言われる、思春期・若年成人(15-39歳)は2万人(2%)
となりますが、就学、就職、結婚、出産に直面する世代と考えられています。

がん治療の化学療法や放射線療法などは
妊孕性(にんよう性=妊娠するために必要な力)が低下してしまう恐れがあります。
そこで、治療前に卵子や精子を採取し、ご夫婦の場合には受精卵として凍結保存しておくことで、将来お子さんをもてるようなサポートが可能となります。

がん患者様の凍結保存といっても、
不妊治療中の患者様の凍結保存と同じ技術で行うことができます。
ただし、日本産科婦人科学会が認定した「妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存期間)」でしか、患者様が凍結保存にかかる費用の助成を受けることはできません。

該当施設は、宮城県でも 当院を含め4施設のみ!

がん患者様の凍結保存にあたっては、がん治療施設との連携や患者様への十分なサポート体制、長期保管も可能な設備や管理が必要となってくるためです。

今回、当院でのこれまでの取り組みと、現在の保管および使用状況について発表させていただきました。
当院は2007年頃からがん患者様の凍結保存を行っており、
2016年からは東北大学病院を中心としたネットワークが強化され、
当院へ紹介いただくことが多くなっております。

患者様の中には、すでに化学療法や放射線療法を開始している方もいらっしゃり、
得られる精子や卵子の数が厳しいケースもあり、個々に状況は異なります。
また、治療を終え自然妊娠により保管の終了を申し出る患者様もいらっしゃいます。

「がん・生殖医療学会」は、毎回内容盛りだくさんですが、
それだけ多くの分野・職種が関わっていることを参加する度に実感させられます。
治療後の妊娠予後について、腹部への放射線照射は卵巣のみならず子宮にも影響し、流産、早産、低出生体重児増加、高血圧、貧血、妊娠糖尿病とも関連してくる等の発表もありました。
その他、各施設で保存した精子や卵子、受精卵の治療予後や、亡くなったご家族の気持ち、がん治療後の悩み、長期で保管を継続されている方の気持ちについても知識を深めることができました。
今後より理解を深めるとともに、凍結保存および保管施設として何かできることはないかも含めて、院内でも共有していければと思います。

培養士 菊地

当院では、情報処理として一緒にお仕事をしていただける方を募集しております。 今回は「情報処理」のお仕事内容を公開いたしますので、興味のある方はぜひご応募ください。

仕事紹介

患者様の大事な卵子・精子・受精卵の情報を扱うお仕事です。
ART(生殖補助医療)治療の要とも言える培養室内で、胚培養士と一緒に受精卵観察の補助業務であるダブルチェックやデータの入力を行います。
また、治療によって得られた大事な卵子・精子・受精卵の凍結保存管理も行っており、保管期限更新のご案内をはじめ、更新・廃棄手続きも行います。
その他にも、病院全体の治療データの抽出や、患者様に提供するデータの集計、臨床研究におけるデータ管理、各種学会への症例登録、File Makerを使用したシステム管理等、チーム医療の一員としてデータ面で診療をサポートする役割を担っております。

一日の流れ
    【午前】
  • 受精卵観察のダブルチェック・データ入力
  • 精子調整業務のダブルチェック
  • 培養記録・融解記録作成
  • 凍結準備
  • 胚移植介助
    【午後】
  • 受精卵観察のダブルチェック・データ入力
  • 精子調整業務のダブルチェック
  • 顕微授精のダブルチェック・データ入力
  • 学会への症例登録
  • 凍結保存物管理業務
  • データ集計・資料作成
仕事風景①
仕事風景② 仕事風景③

バーコードによる検体照合と観察者・補助者による指差し確認

仕事風景④ 仕事風景⑤
教育プログラム

入職後は、先輩がマンツーマンで対応します。
不妊治療専門病院は宮城県内でも数少なく、ほとんどの方が未経験で入職されます。専門的な分野であることから、仕事で使用する言葉の意味や治療の流れなど、教育計画に基づきながらしっかりトレーニングを行っていきます。一度に全ての仕事を覚えるのではなく、ひとつ出来るようになったら、また次の業務と段階を踏み、トレーニング状況を確認しながら指導を行い、約1年程度で独り立ちを目指します。

どんな人が向いているの?

情報処理として、患者様に接する機会はあまりありませんが、医師をはじめ様々な職種を陰ながら支える縁の下の力持ちだと思っています。
不妊治療を受けている患者様が、笑顔に出会えるその日まで、医師をはじめスタッフ一丸となり治療に取り組んでおります。治療と言っても、皆さんが同じ治療を行うわけではなく、様々な場面でどんな治療方法が良いのかを選択しながら、オーダーメイドの治療を行っております。そんな時に、今までの治療成績を集計し、選択の一助となるデータをご提示できるように日々向き合っております。
データを正確に処理することはもちろんのこと、常に向上心を持ち、他スタッフとの連携を図りながら円滑にコミュニケーションを図れることも重要です。
また、パソコンを使用することが多いため、Microsoft Office(Excel・Word・Power point・Outlook)のスキルが必要です。特にExcelでフィルターや関数、データ分析が出来ると、仕事の幅が広がります。


前回に引き続き、培養士Aです。

前編ではタイムラプスがどんなものなのかについて触れました。

今回の後編では、タイムラプスで培養するとどんなメリットがあるのかについて

お話していきます。


①培養環境が安定する

体外受精は文字通り、体外で受精するので体外で育てていきます。

受精卵にとっては女性の体内が成長するためにベストな環境です。

その体内に近づけた環境が、培養器です。

培養器は、温度や二酸化炭素、酸素の濃度を一定に保っています。

外の環境とはかなり違いがあります!

低い温度や高い酸素濃度は受精卵の発育にも影響することがわかっています。

なるべく培養器の中で育てていきたいのですが、

受精卵の様子を観察するときは、培養器から取り出さなければなりません。

↑培養器の外で観察中…

しかし、タイムラプス培養器に入れてあれば、

取り出さずにPC上の写真をみることで受精卵の様子がわかります。

受精卵は、培養器でぬくぬくと安心できますね。

近年では、タイムラプス培養によって胚盤胞発生率や妊娠率が

向上するという報告もあるそうです。

Closed embryo culture system improved embryological and clinical outcome for single vitrified-warmed blastocyst transfer: A single-center large cohort study


②異常分割の観察が可能

異常分割(Abnormal Cleavage)が培養3日目までに観察された受精卵は、

胚盤胞へ発育しにくいことが分かっています。

異常分割がわかると、異常分割が無い受精卵を

優先的に凍結することが可能です。

逆に、タイムラプスを使用しなければ、胚盤胞に成長しないかもしれない、

妊娠する可能性が低い受精卵を移植するリスクがあります。

当院では患者様の希望を伺って、周期ごとにタイムラプスを

使用するかどうか決定します。

タイムラプスは「先進医療」です。

全額自費負担となりますが、保険診療との併用が可能です。

また、治療方針によってはタイムラプスの使用をおすすめする場合があります。

★培養3日目の凍結を考えている方

培養3日目に凍結する=胚盤胞に育つかどうかわからない受精卵を凍結する

ということになります。

なるべく胚盤胞への成長が期待できる受精卵を凍結したいですよね。

タイムラプスで観察して、異常分割がない受精卵を凍結しましょう。

胚盤胞での凍結を考えている方も、もちろん使用できます。

タイムラプスを使用して、受精卵をより安全安心な環境で育てていきましょう。

まだ研究段階ではありますが、

受精卵もより元気に育ってくれるかもしれません。

また、現在のところ当院では受精卵の動画のお渡し等はしておりません。

ご了承ください。

詳しく知りたい方は、培養士や医師にお尋ねください。

受精卵の環境は、私たちが管理しておりますが、

精子も温度が重要です!!!

精子の温度管理についてはこちらのブログをご覧ください。

精子を冷やさないために

毎日あたたかくしてお過ごしくださいね💛

こんにちは。培養士Aです。

お久しぶりになってしまいました。


突然ですが「タイムラプス」ってきいたことありますか?


毎年誕生日に顔写真を撮ってつなげて、少年からおじさんになる動画とか、

同じ場所の写真を撮り続けていくと、段々ビルが建って都会へと変わる街とか、

ありますよね。

一定の間隔で写真を撮り続けることで、変化の過程が観察できます。


受精卵もタイムラプス培養することにより、成長過程の観察ができます。



↑これらがタイムラプス培養器!(種類がいくつかあります!)


タイムラプス培養器にはカメラが内蔵されていて、

10-15分に1回ずつ受精卵の写真を撮り続けています。

その写真は、PC上でみることができます。



具体的にはどんなメリットがあるの?

次回、解説していきますね!


当院では、日常的にお子さんを望まれているカップルに対して、

体外受精後の受精卵の凍結保存を行っていますが、

その技術を生かして、

がん患者さんの卵子や精子の凍結保存

も行っています。


がんや白血病なども、医学の進歩により治療成績が上昇していますが、

一方で治療による薬や放射線照射により、

将来妊娠できる可能性(妊孕性)が失われてしまう可能性があります。

そのため、治療前に卵子や精子を凍結保存しておくことで、

将来お子さんを得られる可能性を残すことができます。


受精卵は複数の細胞から成るため、

凍結融解後の生存率は当院実績でも99.9%となっています。

しかし、卵子はわずか1個の細胞であることからも、

凍結保存技術は比較的難しく、生存率は90%を上回る程度です。

実際に、日本で体外受精を行っている施設のうち、

がん患者さんの卵子凍結を行っている施設はおよそ3割程度でしかなく、

地域によっては凍結保存を希望されても

叶えにくい状況もあることが考えられます。


当院は「宮城県がん・生殖ネットワーク」に加入しており、

がん治療前の限られた期間の中で施設同士円滑に連携し、

がん患者さんに正しい情報提供を行えるような仕組みが作られています。

具体的には、

①がん治療施設と、東北大学病院や宮城県立がんセンター

といったコーディネーター施設の連携による

凍結保存の情報提供、

②コーディネーター施設と当院などの

凍結保存施設の連携による凍結保存の実施です。


当院は、凍結保存の実施施設として、がん患者さんの体調を最優先しつつ、

安全かつ安心して治療を受けていただけるような取り組みをしてきました。


この度、当院は日本がん・生殖医療学会で認定している

【認定がん・生殖医療施設】として承認されました。

がん治療自体や、卵子や精子の凍結保存といった生殖医療は、

多くの領域かつ多職種(医師、薬剤師、看護師、心理師、検査技師、

栄養士、社会福祉士、培養士など)が関わっています。

がん患者さんに、将来妊娠できる可能性が

失われてしまう可能性があるということ、

凍結保存によってお子さんを得られる可能性を残せることを社会に啓発し、

より高度ながん・生殖医療の提供を実現するための制度

となっています。


今後もがん患者さんに希望を持って治療に臨んでいただけるように、

精度の高い凍結保存技術を提供するとともに、

啓蒙活動にも携わっていければと思います。


培養士:菊地